森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
降水量が少なく環境の厳しいところでは、植栽本数は少し減っても確実に苗木を活着させるため、土手を作るなど地形を改変して雨水を誘導する技術(water harvesting)が適用される。この作業は乾燥地で広く行われており、多くの参考文献がある(1, 2)。地形の特徴、利用できる資材などによりさまざまなタイプの集水工法がある。広い面積に対して大規模に長いトレンチや石組みでテラスを作ったりすることがあるが、別途項目(テラス工法)で解説する。
ミャンマーマンダレー州の植林地における開放式単離並列型(下図参照)の作成作業風景と降雨がたまった様子。
マイクロキャッチメントは規模や地形等に対応して様々な形状が可能である。浅川(3)がケニア、キツイの例を紹介し、和名で形状を区分している(図1)
マイクロキャッチメントは果樹などでも利用されており、果実の収量を比較した論文がある(4)。米国アリゾナ州(年降水量230mm)においてホホバ(Simmondsia chinensis)の植栽において、地表処理を行わないコントロール区(0)、除草後マイクロキャッチメントを造成して植栽した区(T1)、さらに地表に撥水ワックスを施用し集水効率を高めた処理区(T2) を比較した(図2)。ホホバの実の収量は、特殊な処理であるがT2が最も多く、T1でもコントロールに比べ約3倍の収量があった。
そのほか、インドの乾燥地でニーム(Azadirachta indica)の植栽にあたり、複数の植栽方法を比較したところ、直径1.5mの集水マイクロキャッチメントを作り苗木の根元にマルチを組み合わせ方法等は効果があったという論文がある(5)。
マイクロキャッチメントにより土壌水分が改善されると、植栽樹種だけでなく雑草も繁茂しがちで、除草が必要となることがある。また、土壌の透水性、斜面の傾斜、土壌の深さによって集水量と保水量が変わるので、現場に応じたキャッチメントサイズとする必要がある。土壌が保水できる量を超えて集水すると土壌侵食につながる。