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土壌改良(酸性矯正)

酸性を矯正する資材

強酸性土壌にアルカリ性の資材を混和して、酸性を化学的に中和する(酸性矯正という)。アルカリ資材は石灰系の各種資材が用いられる。一般には炭酸カルシウム(炭カル、炭酸石灰)が使われる。消石灰や生石灰は即効性であるが、混合後、植栽までに2~3週間おく必要がある。炭酸カルシウムと同じ成分からできた貝殻の微粉砕資材も同様に使用できる1)

酸性中和の工法

炭酸カルシウムを酸性土壌に散布・混合し、pHを矯正する。施用する石灰量は、対象とする土壌や目標pHにより異なるので、試験的に石灰混合量を変えて土壌pHを測定し、その変化から求める2)。農地では、簡略法として、施用量の換算表(アウレニウス表)も使われる(表)3)。しかし、表にはpH4.0以下の強酸性土壌は含まれず、現場の土壌を用いて検討する必要がある。アウレニウス表からわかるように、粘土質な土壌ほど、また腐植が多い土壌ほど、石灰の施用量は多くなる。pH4を大幅に下まわる酸性硫酸塩土壌を中和するには、炭酸カルシウム量を1m2当たり数kgと大量に施用しなければならない。労力も経費もかなりの負担になる。また、パイライトが残留している潜在的酸性硫酸塩土壌では、土壌改良後も酸化による硫酸生成が続き酸性化が進む。できれば、土壌を耕起して数か月以上放置し、パイライトの酸化を促進させてから中和作業を行うと、石灰施用量を減らすことができる。

表 pH6.5に矯正するために必要な炭酸カルシウム施用量(g/m2、深さ10cm当たり)
土性 腐植量 初期pH
4 4.2 4.4 4.6 4.8 5 6
砂壌土 含む 424 390 356 323 289 255 86
富む 634 581 533 480 431 379 128
すこぶる富む 986 908 829 750 671 593 199
壌土 含む 634 581 533 480 431 379 128
富む 844 776 709 641 574 506 169
すこぶる富む 1268 1166 1065 964 863 761 255
埴壌土 含む 844 776 709 641 574 506 169
富む 1054 971 885 803 716 634 210
すこぶる富む 1549 1425 1301 1178 1054 930 315

その他、注意点

土壌と石灰を混合した深さまでしか植物根は生育できないので、根系は深く伸長しない。樹高が高くなる樹種を避け、将来林型を高木林にしない4)。土壌改良しても、時間が経つとパイライトが次第に酸化して、再度酸性化し、植物が枯死することがある。経過を時々観察し、必要であれば客土や酸性矯正等の追加措置をとる。

生石灰は水に触れると高温になり火災を起こすことがあるので、保管や取り扱いに注意する5)

参考文献

  1. 細淵・中住(2007)石灰質資材に適したカキ殻粉砕物の粒径。日本土壌肥料学会誌 78: 199-202.
  2. 土壌環境分析法編集委員会編 (1997) 土壌環境分析法。中和石灰量(緩衝曲線法)p.199-201. 博友社
  3. 農林水産省。 http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/tuti13.pdf
  4. 長野県林業コンサルタント協会。強酸性土壌地帯の緑化対策の基礎。http://www.rincon.or.jp/gijyutu/ryokuka/index.html
  5. 日本石灰協会・日本石灰工業組合。http://www.jplime.com/qa/fileB.html#b004