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植生基盤材(植生基材)

植生基盤材とは

植生基盤は、植物が正常に生育できる状態の地盤のことで、根系が生育できる十分な深さと広がりが必要である。さらに、物理的には透水性が良好で、適度な硬度と保水性があり、化学的には有害物質を含まず、適度な養分をもち、適正な酸度の範囲にあることが望まれる。そのような植生基盤を人工的に作ったものが植生基盤材または植生基材と呼ばれる。ふつうはモルタル吹付用のガンで斜面に吹き付ける。

植生基盤材による吹付工と強酸性土壌への適用

植生基(盤)材は、通常、肥料や土壌改良材が混和された緑化資材である。バークたい肥等の有機質系を主にしたものや砂質土壌などの無機質系を主にしたものがある。土壌の耐侵食性を高めるため、粘着剤や接合材が添加される。粘着剤にはセメント系と高分子系樹脂があり、セメント系の方が長期間保持力を維持できるが、pHが高くなりすぎないよう注意する。基盤材は適度な硬さが必要であり、山中式硬度計で確認する。根の伸長には硬度10~25mm程度が適切で、10mm未満だと乾燥したり崩れたりする。27mmを超えると根の伸長が妨げられる。植生基盤材に、植物と共生する菌根菌を混合し、強酸性土壌や養分の乏しい荒廃地に緑化する試みも行われている(別項目:菌根の接種参照)。

斜面が岩盤や強酸性土壌の場合、根が地盤に伸長できないので、基盤材を厚く吹き付ける。また、基盤材の厚さや容量が少ないと乾燥しやすくなるので、降水量が少ない地域ほど厚く吹付けられる。ただし、急斜面では吹付基盤材は降雨で流去するので、法枠工など緑化基礎工と組み合わせる。

一般に木本を緑化する場合は草本より厚く吹付をする。あらかじめ種子を配合した基盤材の場合、自然淘汰や被圧で枯損し、成立本数は徐々に減少して一定の本数に落ち着く。通常、1m2当たり10~50本程度発芽するよう種子を入れる。覆土が厚いと発芽しにくい樹種もあるので、吹付厚が厚い場合は多めに配合する。基盤材に現地で採取した表土を混ぜて埋土種子による発芽を利用することもある。在来種を利用することは遺伝子のかく乱を防ぐ面から推奨される。しかし、種子の発芽率、埋土種子の種類など情報が必要で、事前に予備試験を行った方がよい。

強酸性土壌への緑化吹付工は次第に酸性化し失敗する事例が多い。吹付の前に岩盤の酸性矯正や長期的な酸性影響を遮蔽または緩和するマット、酸を緩衝する資材等を設置してから吹付ける。国内の土木工事現場では、酸性硫酸塩土壌に対する多くの工法が開発されているが、たいてい特許技術である。特殊な工法なのでコストは高い。

図 日本の植生吹付工の一般的な施工図。強酸性土壌の場合、鉄の金網やアンカーは腐食するので使えない。

参考文献

  1. 長野県強酸性土壌地帯の緑化対策 http://www.rincon.or.jp/gijyutu/ryokuka/index.html