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酸性土壌における樹種選定

酸性土壌における樹種選定

土壌の観点から最も深刻なストレス環境とされる酸性土壌は耕作可能陸地の30%強を占めるが、こうした土壌では、生産性の維持に多量の石灰とリン酸肥料の投入が必要である(小山・河津, 2004)

ただし、植物の酸性土壌耐性には種間差・品種間差があり、酸性土壌(特に、pH4.5以下の強酸性土壌)に耐性を持つ樹木や灌木は多く存在する。強酸性土壌のpHを人為的に改善するよりは、そのような耐性樹種を選定して植えた方が良い解決方法となり得る(Appleton et al.)。

酸性土壌における生育阻害ストレスと耐性機構

強酸性土壌において植物の生育を阻害する要因として、水素イオンそのものの害、アルミニウムやマンガンの過剰害、リンの不足、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどの塩基の不足、微量元素の不足及び硝酸化成・窒素固定作用などの不良があげられる(田原, 2005)。

特に、温帯~熱帯域に広く分布する酸性土壌では、カルシウムやマグネシウムが溶脱により欠乏し、さらに根の伸長を阻害するアルミニウムイオンが可溶化する。この種の酸性土壌では、植物の生育制限因子であるリン酸は、アルミニウムと難溶性のリン酸塩を生成することにより施肥効果が低くなる。また、酸性土壌において特徴的な“根の生育不良”は、主にアルミニウムイオンにより根端の分裂伸長領域をターゲットとして生じる。その結果、植物は乾燥した時期に十分な水分を吸収するために必要な根圏域を確保することができずに、旱魃期には致命的な影響を受ける(小山・河津, 2004)。

植物のアルミニウム耐性には内部の耐性と排除機構が存在し、リン酸欠乏に対しては難溶性リン酸を可溶化する機構が存在する(小山・河津, 2004)。田原ら(2018)は、ユーカリの根において合成されるタンニンが、根に侵入したアルミニウムと結合して無毒化していることを明らかにしており、ユーカリの体内でタンニンが合成されるメカニズムを研究している。

強酸性土壌における造林樹種の選定

強酸性土壌に耐性を持つ樹種は、このようなアルミニウム耐性及びリン酸可溶化機構を備えていると考えられる。これまでに文献・資料から以下の樹種が酸性および強酸性土壌に耐性を持つと報告されている。
酸性および強酸性土壌に耐性を持つ樹種の一覧

文献

  1. Appleton B., Heins R., Donohue S., Eaton G., Williams J. Trees and Shrubs for Acid Soils. Virginia Cooperative Extension Publication 430-027.
    https://pubs.ext.vt.edu/content/dam/pubs_ext_vt_edu/430/430-027/430-027_pdf.pdf
  2. Cole T. G., Yost R. S., Kablan R., Olsen T. (1996) Growth potential of twelve Acacia species on acid soils in Hawaii. Forest Ecology and Management, Volume 80, Issues 1–3, January 1996, Pages 175-186.
    https://doi.org/10.1016/0378-1127(95)03610-5
  3. Duguma, B., Tonye, J., Kanmegne, J. et al. (1994) Growth of ten multipurpose tree species on acid soils in Sangmelima, Cameroon. Agroforest Syst 1994 27: 107.
    https://doi.org/10.1007/BF00705468
  4. Powell M. H. (1996) Nitrogen Fixing Trees for Acid Soils – a Field Manual. Winrock International Institute for Agricultural Development, Morrilton, Arkansas.
    http://www.asb.cgiar.org/publication/nitrogen-fixing-trees-acid-soils-field-manual
  5. Plant Resources of South-East Asia (PROSEA).World Agroforestry Centre (WAC). Agroforestree Database.
    http://www.worldagroforestry.org/resources/databases/agroforestree
  6. 小山博之・河津哲 (2004) 分子改良による植林樹木ユーカリの酸性土壌耐性強化戦略. 化学と生物 Vol. 42, No. 10.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/42/10/42_10_651/_pdf/-char/ja
  7. 田原 恒 (2005) Melaleuca cajuputiのアルミニウム耐性機構.
    http://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I001598614-00
  8. 田原 恒、西口 満、Andrej Frolov、Juliane Mittasch、Carsten Milkowski (2018) Identification of UDP glucosyltransferases from the aluminum-resistant tree Eucalyptus camaldulensis forming β-glucogallin, the precursor of hydrolyzable tannins. Phytochemistry、152巻 154-161、Elsevier、2018年5月発行.
    https://doi.org/10.1016/j.phytochem.2018.05.005
  9. 森徳典ら(1996-97)熱帯樹種の造林特性 第1-3巻. 国際緑化推進センター