森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
挿し穂を用いて苗木を増殖することを挿し木苗と呼ぶ。挿し木苗は、発根率が高い樹種であり、①種子の入手に支障があるとき、②種子の入手に支障はないが、優良クローンの増殖をしたい場合に用いられる(山手, 1993)。
挿し穂は、母樹又は優良樹が植栽された採穂園から採取する。挿し穂の発根能力はクローン固有であることが多いため、母樹や採穂樹の選定は種子の選定と同様に重要である(Wilkinson et al. 2014)。
挿し木の養成について、以下の3つの方法がある(山手, 1993)。
一般に若い母樹から採穂したものが活着率が高いとされている。採穂は、はじめから10~20cm程度のほぼ挿し穂の長さで取るもの、又は、長い枝を取って切り分けることもある。広葉樹を例にとれば、穂作りは10~15cmとし、挿し口は斜め切りし、裏側から切り返して穂作りするのが一般的である(山手, 1993)
挿し木の発根を促す薬品は、多数開発されている。林業種苗関係で一般に使用されている発根促進ホルモンは、①ベーターインドール酢酸(LAA)、②ベーターインドール酪酸(IBA)、③アルファーナフタリン酢酸(NAA)で、これらは価格が手ごろで使いやすい。また、処理法は、粉剤の場合はそのまま粉衣する。液剤では、所定の濃度・浸漬時間の指示を守る。
挿し木による増殖が可能な樹種はいろいろ知られているが、事業的な苗木育成に挿し木苗が実際に応用されている樹種はそれほど多くない。普通、チーク(Tectona gradis)、メリナ(Gmelina arborea)は発根しやすく、ユーカリ類(Eucalyptus spp.)は発根しにくいとされている。ただし、ブラジルやコンゴで大規模に植栽されているユーカリ類(E. alba、E. grandis、E. saligna、E. urophylla等)では、萌芽枝からの挿し木苗が用いられている。タイでは、導入種であるCasuarina junghuhniana(モクマオウの1種、インドネシア原産)の苗木育成に、木化した小枝を用いて挿し木繁殖を行っている。マメ科樹木にも挿し木の可能な樹種が多いが、とくにグリリシディア(Gliricidia)やデイゴ類(Erythrina spp.)は挿し木発根が極めて容易で、直挿しさえできることでよく知られている。また、カリン(Pterocarpus indicus)も発根しやすく、挿し木苗の育成が可能である(浅川, 1992)。
その他、これまでに挿し木が適用できるとされている樹種は以下の通り。