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ポット苗の育苗手順

ポット用土

ポットに詰める土にもいろいろな組成が示されているが、近くの林地の表層土壌と砂を4:1くらいの割合で混ぜるのが普通である。この割合は表層土の土性によって変える必要があり、砂質の場合には砂の割合は減らすか、全く加えない。要するに、潅水した水がうまく浸み込み、しかも、植栽時にポットを外したときに簡単に崩れない程度の粘りけをもたせることが必要である。水の浸み込みをよくするために、ポット用土の上面に1cmくらいの厚さに砂を入れることもある。1/10容くらいの堆肥や厩肥を混ぜることもあり、少量の粒状または粉状の化成肥料をポットの下部に入れることもある。

マツ類などの菌根菌、根粒樹木の場合の根粒菌についてはポット用土に含まれていない場合は、接種する。

播き付け

ポットに直接種子を播いてそのまま苗木にする方法と、一旦播き付け箱に播き、発芽後早い時期にポットに移植する方法とがある。粒播きできるくらいの大きさの種子で、発芽率が50%またはそれ以上あれば、ポットに直接播く方がよく、発芽率が50~75%ならばポットあたり2粒、75%以上であればポットあたり1粒を播く。3週間後に芽出しの状況をみて、2本出ている場合には1本を出なかったポットに移植し、残った不発芽のポットには改めて播き付ける。

写真1.ポットへの直播き

播き付け箱に播いて移植する方法のほうが、労力・経費ともかさむが、多くのユーカリや、Anthocephalus chinensis等のような微細な種子の場合には普通播き付け箱によっている。なお、ブラジルでは、ユーカリの微細な種子をポットに直播きするための道具(semeador manual)が考案されている。

写真2.播き付け箱への播種

移植

巻き付け箱で発芽した芽生えは、適期にポットに移植する。樹種により、また気候条件によっても異なるが、マツ類やマメ科樹木では発芽から3~7日後に移植を行うのがよいとされている。巻き付け箱に長くおくと根が長くなり、側根も増えて移植しにくくなるし、地上部も大きくなって活着しにくくなる。移植後は十分に潅水し、その後7~10日は日覆(相対照度で約60%の遮光率程度)を行う。

日覆

微小な種子の播き付け床や、移植した後の芽生えには日覆をかけるのが普通である。現地では、草を編んだり、ヤシ、竹や引き割板を適当な間隔でつないだりして用いることが多い。しかし、寒冷紗があればそれに越したことはなく、その場合には可動式にして、天候によって適宜取り外すようにもできる。

草、ヤシ、竹や木材を使う場合には、光不足で徒長を起こしがちなので注意を要する。できれば相対照度を測り、60~70%の光条件にする。

潅水

移植後10日間くらいは、毎日早朝と午後遅くに潅水を行う。潅水後の用土表面の水の浸透状況をよく観察して、過湿にならないように注意する。この期間の後は、それぞれの気象条件によって適切な潅水を行うことが望ましい。モンスーン地帯の乾季であれば、乾燥しているので、この後も同量の潅水を毎日行うこととし、山出し1ヶ月前からは苗木の耐乾性を高めるためのハードニングを目的として1日1回あるいは隔日に減らして、苗木の反応をみながら加減をする。現地での潅水の仕方を見ると、過剰に潅水されていることが多く、実際の育苗にあたっては、潅水量をどの程度まで減らすことが可能か、注意深く検討する必要がある。

除草

ポットに直播きする場合や、移植されたポットについては、早め早めに除草することが望ましい。さもないと、芽生えが草と一緒に引き抜かれかねない。

消毒

ポットで育成されている苗木は、潅水時に一時的に冠水状態になりがちで、そのために苗床のばあいよりも病原菌に侵されやすい。一度病気が発生すると治療は極めて難しいので、平素から注意深く観察し、できるだけ病気になる前に消毒を行って発生を抑えるように務める。なお、樹種によっては特に病害を受けやすいものがあるので、そういう樹種については定期的に消毒を行うほうがよい。

参考文献

  1. 浅川澄彦 (1992) 熱帯の造林技術. 熱帯林造成技術テキスト No.1. 国際緑化推進センター.