森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
熱帯諸国では、冬がないために苗木が休眠することがない。このため、植栽にあたって根系をできるだけ傷めないように、根鉢が形成され成形性が保たれる各種のポットを用いて苗木を育てること(ポット苗)が普通である。また、乾季のあるところでは、雨季に入って間もなく植栽するが、雨の降り方が不規則なことが多く、現場で植えられた苗木は強い日射と高温に曝される。したがって、育苗中につくられた根系が、植栽後そのまま引き続き機能して、できるだけ早く、深く、そして広く根を張ることが望ましい(浅川, 1992)。
ポットは黒色、半透明又は無色透明のポリエチレンフィルム製の袋状のものが多い。袋状の底つきポット苗の場合には、水が抜けるようにポット下部に小穴を開ける。なお、チューブ状のものを適当な長さに裁断して底がない底なしポットを使用する場合があるが、持ち運びが困難なこと、主根がすぐにポットの外、土中に伸び出て、側根が余り土を抱かないこと、等の問題が指摘される(山手, 1993)。
ポットのサイズは、植林計画、樹種によってまちまちであるが、基本的には、山出し時の苗木のサイズを基にして決められる。一般的に、苗高30cm の苗を育成するには、ポット苗の場合、直径6.5cm、深さ15cmが最低必要である(浅川, 1992)。
ポット育苗事業における大きな問題は、苗木育成の都度、多量のポット用土が必要なこと、苗畑から植栽地への運搬及び植栽地内での小運搬が大変なことである。特に、ポット内下部で根が巻く現象が将来の生育過程で深刻な後遺症を残すことが指摘されている(浅川, 1992)。ポット苗では、鉢底の隅で根がぐるぐる回る変形が一般に激しく、これをそのまま植えると、巻いた根が生き残って、自分の根で自分の根元を絞めるおそれがあり、成長不良や根腐れ、枯死にまで至る危険がある(遠藤ら, 2009)。
ポットをそのまま地面に置くと、底なしポットの場合や底つきポットの場合でもポット下部の小穴から土中に根が伸びてしまう。放っておくとポットの外側の土中の根がどんどん大きくなってしまい、ポット苗の利点が失われてしまうので、根をしばしば剪定しなければならない。そこで、ポリエチレンシートなどをポットの下に敷く方法も取られているが、経費も係るし、ポットの下縁に沿って根巻きができる場合もあるので効用があるとは言い難い(浅川, 1992)。
土中への根の伸長現象を防止するために、地面か離して棚の上にポットを並べる方法がある。これによってポットの下面に突き出た根端は空気に触れて萎縮、枯死する。いわゆる空気根きりで、先端の成長が止まった根が現場に植栽後、速やかな成長を開始することが期待されている。また、根の元の方で分岐が促進され、側根が増える利点もある。ただし、底つきポットの場合、根巻き現象の問題は残る(浅川, 1992)。
これらの問題を解決するために、現在では、プラスチック製の筒型空洞に比較的軽軟な合成培土を詰めて、地面から離して棚で苗を育てて空気根きりをするコンテナ苗が主流となってきている。コンテナ苗は、運搬しやすい、リブやサイドスリットによって根巻きが起こらない、空気根きりができる、根鉢が崩れない状態になっている(成形性)ことで活着や初期の成長が良い、植栽時期の自由度が広がる(遠藤ら, 2009、落合ら, 2014)および何回も繰り返し使用できるなどの長所はあるが、初期投資額がかさむという欠点はある。