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種子の調整・貯蔵と発芽促進法

種子(果実)の調整・貯蔵について

熱帯の樹木種子も、生理的な特性によって2つのグループに大別される。1つは、乾かして含水率を下げても活力を失わない種子で、他は含水率が約25%を割ると活力を失う種子である。前者については、結実した機会に、予算・労力の許す範囲で出来るだけ多く採取するようにつとめ、適切な調整を行った後、所定の条件で貯蔵しておく。寿命の短い後者については、採取した後十分な活力があるうちに播き付けを行う(浅川 1992)。

マツ類、多くのユーカリ類は乾燥しても活力を失わない種子であり、これらの種子は、気乾状態で密閉して-18℃におけば15年も効果的に貯蔵できたという報告があり、方法さえ適切であれば、かなりの長期間にわたって貯蔵することができる。マメ科の種子も、いわゆる硬粒のものが多く、一般には寿命が長いとされている。一方、乾燥できない種子の代表格はフタバガキ科の種子(厳密には果実)で、短いものは1週間くらいで活力を失うとされている。

写真1.マメ科の種子の天日乾燥

乾燥してもよい種子の調整・貯蔵について

乾燥してもよい樹種群の種子は、天日乾燥して少なくとも気乾状態にしてから缶やジャーなどに入れて、できれば低温(0℃前後)で貯蔵する。ただし、気温で貯蔵する場合には、含水率が高い種子を密閉した容器に入れるのは危険で、このような種子はむしろ紙袋か布袋に入れるほうがよい。

写真2.乾燥してもよい種子の貯蔵

乾燥できない種子の調整・貯蔵について

一方、乾燥すると急激に活力を失うような種子は、活力を失わない程度の水分を保ちながら、低温に置いて貯蔵する。例えば、ナッツ含有種は、種子が高い相対湿度下で高い含水率(35~50%)を保持し、冷温で良好な通気性を保持する限り数ヶ月保存することができる。 これらの種子の貯蔵に理想的な温度は、種ごとに決定される(Wilkinson et al. 2014)。

発芽試験は100粒×4組で行うのが正式ではあるが、大粒種子の場合、施設が狭い場合などには、50粒×(4~2組)など適宜に規模を縮小して行う。熱帯・亜熱帯の樹種の種子には生理的休暇を示すものは少ないようであるが、マメ科樹木の硬粒種子のような物理的休眠を示すものは多いから、こういう種子は、それぞれに適切な発芽促進処理を行った上で試験する必要がある。なお、土や砂に播く場合には、覆土が厚くなりすぎないように注意する。ふつうには種子の大きさと同じ程度の厚さにする。

種子の品質検査

種子を効率的に使うためにはその発芽率を知っておく必要がある。発芽試験の方法は、発芽試験室や発芽皿がなければ、小屋かガラス室の中で、播き付け箱などを使って槌か砂に播き付ける。

発芽試験は100粒×4組で行うのが正式ではあるが、大粒種子の場合、施設が狭い場合などには、50粒×(4~2組)など適宜に規模を縮小して行う。熱帯・亜熱帯の樹種の種子には生理的休暇を示すものは少ないようであるが、マメ科樹木の硬粒種子のような物理的休眠を示すものは多いから、こういう種子は、それぞれに適切な発芽促進処理を行った上で試験する必要がある。なお、土や砂に播く場合には、覆土が厚くなりすぎないように注意する。ふつうには種子の大きさと同じ程度の厚さにする。

発芽促進法

雨期・乾期のサイクル、半乾燥気候、乾燥気候または低温高地の熱帯種には、しばしば休眠種子が存在する。休眠は、種子の外部(物理的)または内部(形態的・生理的)の要因によって引き起こされる可能性がある。 いくつかの種は、外部と内部の休眠の組み合わせ、二重休眠もある。 種子の休眠タイプを知ることは、発芽が成功するために不可欠である(Wilkinson et al. 2014)。

外部休眠

マメ科の樹木のほとんどの種子はいわゆる硬粒(硬実)で物理的休眠をしており、何らかの方法で種皮処理をしなければならない。種皮処理には、①機械的処理(傷をつける)、②熱湯法(熱湯につける)及び③化学的処理(硫酸につける)等がある。その他、マメ科の樹木以外にも硬粒種子がある。

①機械的処理

種子に傷をつける最も簡単な方法は、爪切り、ラジオペンチ、金ヤスリ、小刀、針などで種皮の一端を切り取ったり、種皮に小さな穴を開けたりすることである。ただし、種子の胚とくに幼根を傷付けないように注意する。まとまった量の種子を傷付け処理する場合には、磨傷機とよばれる器具(例えば石臼、乳鉢など)を用いる。

②熱湯法

熱湯方には、水に種子を入れれて加熱、所定の温度に達したところで火を止める方法、沸騰水に種子を入れてそのまま冷却する方法、網篭に入れた種子に沸騰水をかける方法などがあり、硬粒の程度によって使い分けられている。

③化学的処理

硫酸処理は、種子を濃硫酸に所定の時間浸漬した後、プラスチック製などの網を用いて硫酸を除き、種子表面を水で完全に洗い流す。しかし硫酸は取り扱いが厄介なので、まず熱湯方を試みて、促進効果が得られれば、それによる方がよい。

内部休眠

内部休眠は、形態的、生理的、またはその両方であり得る。形態的休眠を有する種子は、未発達の胚を有したまま母植物から分散される。種子が発芽する前に胚が完全に成熟するために熟成期間(通常、暖かく湿った状態)が必要である。形態学的休眠を示す熱帯種として、Annonaceae、Dilleniaceae、MagnoliaceaeおよびMyristicaceae科および多くのヤシ種がある。 この種の種子は、播種後数ヶ月から1年間発芽しない。生理的休眠は、半乾燥および乾燥熱帯のいくつかの種に見られる。種子は水に対して透過性であるが、種子の内部が化学変化して発芽を可能にするためには一定の環境条件が必要である。形態学的 – 生理学的休眠を有する種子は、通常、発芽する前に、しばしば長期間にわたり、温かい状態と寒い状態の組み合わせを必要とする(Wilkinson et al. 2014)。

参考文献

  1. 浅川澄彦 (1992) 熱帯の造林技術. 熱帯林造成技術テキスト No.1. 国際緑化推進センター.
  2. Wilkinson KM, Landis TD, Haase DL, Daley BF, Dumroese RK (eds) (2014) Tropical Nursery Manual: A Guide to Starting and Operating a Nursery for Native and Traditional Plants. USDA Forest Service. Agriculture Handbook 732.