森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
平らな地面にポットを並べるだけのこともあるが、竹や板で枠を作ってその中に並べることもある。また、レンガやブロックを用いて固定した半永久的な床もある。床面は普通は地面のままである。コンクリートにしている例もみられるが、経費がかさむだけでなく、日射で熱をもち、ポット内の土の温度が上がって根の成長にもよくない。シロアリの害を防ぐ目的でコンクリート床を試みた例もあるが、明確な効果は認められなかったようである。なお、底のあるポットの場合には下部の排水孔から、またチューブタイプの底なしポットの場合には底面からの根の伸長を防ぐ効果はある。常風が強いサイトの場合や、冠水によって潅水を行う場合には、床面を周囲よりむしろ低く削り込む。また底なしポットを用いる場合には、底面から地中に伸びる根を定期的に剪定する必要があるので、ポリエチレンなどのシートを敷いて根が地中に入るのを防ぐ方法と、地面から5~10cm離して金網を固定し、その上にポットを並べて自然根きり(air-pruning)を起こさせる方法がある。
スタンプ苗は裸根苗から調整されるもので、同じように普通の苗床が使われる。床面を5~10cm程度盛り上げる方法と、盛り上げた側面を厚板で押さえる方法とがある。東アフリカでは、後者をスワジランドタイプと呼んでいる。
加圧方式にしろ自然流下方式にしろ、配管が可能である場合には、苗畑内の適当な箇所に蛇口をつけて、局所的に水を利用できるようにしておくと便利である。水源が豊富で加圧方式の配管ができれば、スプリンクラーによる自動潅水が理想である。苗床より高いところに豊富な水源があって土壌の性質が適していれば、冠水法(flood irrigation)や水路潅水(furrow irrigation)を行うこともあり、これらは併せてsurface irrigationと呼ばれている。
冠水法では、主水路(main ditch, head ditch)から床面を低くした苗床に水を引き込んで冠水させる。水路潅水では、主水路から苗床の両側に回した支水路に水を引き込み、床の周囲から水を浸透させる方法で、どちらかというと裸根苗を育成する苗床向きである。
セネガルで行われた青年海外協力隊の緑の推進協力プロジェクトでは、surface irrigationの一種といえるプール方式とよばれる育苗施設を考案し、水を節約して苗木生産を向上するという面で高い評価を得た。コンクリート水槽にポット苗を並べて水路潅水を行う方式で、水の有効利用という点では画期的な方法であったが、水槽の製造費がかさむこと、適切に排水管理を行わないと根腐れを起こす恐れがあることなどの問題点も指摘された。
苗床の外縁に沿って杭を立て、鉄線を張って可動式の寒冷紗を取り付ける。寒冷紗を張る高さを50~70cm程度にする場合と、2m程度にする場合とがある。前者では苗床1本ごとに日覆施設を作るのが一般的であるが、後者では数本の苗床をまとめて覆うため寒冷紗の下で作業が可能である。
実際には、木綿の布地、草、竹、板、ゴザなど、現場で入手可能な材料を用いて遮光を行っているが、光が不足すると苗木が徒長するので注意を要する。