森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
世界では毎年平均760万ヘクタールもの森林が失われている(FAO 2015)。近年、世界で最も森林減少が著しいのは、熱帯諸国で、これらの国々では、20世紀以降急速に森林が失われてきた。
このように森林が失われた土地あるいは荒廃地を再び森林に戻すこと、あるいは草原に新たな森林を造成することの必要性は、とくに近年強く認識されている。しかしながら、年々の造林面積は少なく、しかもその成林率は一般に低いことが問題となっている。つまり折角植栽されても、いろいろな理由で森林にならないことが多い。したがって、造林面積を増やすことも緊急の課題ではあるが、植栽したところは必ず森林にできるような技術的な改善をはかり、造林成績を向上することも大きな課題である。
熱帯・亜熱帯における造林を成功させるためには、現地の立地条件を十分に理解し、そこに適合した樹種・系統を選び、強く育て、それぞれの環境に適した方法で植栽し、適切な保育を行わなければならない。実際、熱帯における造林技術は、いろいろな点で我が国の造林技術とは異なっている。まずは、これまでに現地で開発されている技術を発掘・整理し、必要に応じてそれらの体系化をはかりながら、その上で新しい課題を解決してゆかなければならない。
熱帯造林の主要な舞台は、初めは熱帯・亜熱帯の低地多雨林、季節林地帯であったが、その後、サバンナ林などを含むいわゆる半乾燥地、さらには現在森林のない乾燥地や砂漠にまで広げられようとしている。特に、厳しい自然環境の下にある半乾燥地・乾燥地については、その実態を十分に理解して造林を進めてゆかなければならない。
造林は、自然条件を巧みに利用して森林の代替わりをおこなう天然更新と、人力で種子を播きつけたり、苗木を植え込んだりして森林を仕立てる人工造林に分けられている。現在森林がない土地に森林を戻し、あるいは森林を造成することが熱帯における当面の緊急な課題であるので、特に人工造林技術が必要とされている。