森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
客土とは、その土地の利用目的に問題のある土壌が分布する場合、他所から問題のない土壌を運んでくることである。森林再生と緑化のためには、植物の生育可能な土壌を客土する。客土した土壌を混合して問題を緩和できる場合もある。しかし、強酸性土壌を土壌だけで中和するには多量の土壌が必要である。普通、緑化植物の根系が強酸性土壌に達しないよう、土壌を厚く盛り、露出した酸性硫酸塩土壌を深くに埋める。
植物の根系は数10cm~1mに達するため、客土だけで対応する場合にはかなりの土量が必要である。そのため、中和処理(土壌改良の項参照)やシートによる遮蔽と組み合わせて土層厚を薄く抑える工法が各種開発され、特殊な工法は、特許が取得されている(植生基盤材の項参照)。さらに、斜面が急な場合、土壌流亡の防止や斜面を安定化させる枠工や筋工等を組み合わせて客土するのが一般的である。
下の表に福島県の事例を示した。施工2年後と14年後の土壌の変化を調べている。施工は斜度30~50度の急傾斜地に、幅40cm、深さ40cmの溝を等高線に沿って堀り、溝の底面及び側面に消石灰を散布し、さらに消石灰とバークたい肥、化成肥料をpH6.1の砂質壌土(黒色土)に混合して溝に投入した(客土式筋工)。施工2年後には、斜面上部から強酸性土砂が流入し、表層0-10cmの層が酸性化している。施工14年後には、客土部の中心付近の土壌もpH4台に低下した。一方、筋工周辺の非施工部では14年後にpH4程度まで上昇したが、交換性アルミニウムの指標である交換酸度(y1)は客土部より6~14倍と高く、植物生育にはあまり適さない状態が続いている。
このように、一時的に土壌が改良されても、再び酸性化することが多いので、植栽後の経過を定期的に観察した方がよい。
潜在的酸性硫酸塩土壌では硫酸が長期間生成されるので、一時的に中和されても再び酸性化することが多い。植物の生育基盤となる土層が薄いこと、影響が長期化することを考慮し、酸性に弱い樹種や高木になる樹種は選択しない。まず斜面の安定をめざし、酸性硫酸塩土壌を再度露出させないようにする。将来の林型は高木林型をめざさず、中長期的な計画を作成すること等が重要である2)。