森林再生テクニカルノート(TPPs)は、途上国の劣化が進んだ森林や開発後に放棄され荒廃した土地等において、効果的な森林の再生に大きく貢献する技術集です。
酸性硫酸塩土壌とは、硫黄を含む化合物によりpH4以下の極めて強い酸性を呈するか、あるいは強酸性となる可能性をもつ土壌である。海水など硫酸イオンを含んだ水と有機物を含んだ土壌が還元的な状態になると、硫酸還元菌により硫化水素H2Sが生成し、それが土壌中の二価鉄(Fe2+)と反応すると、硫化鉄鉱物(パイライト(FeS)、黄鉄鉱)が蓄積する。そのような土壌が排水されたり掘り出されて酸化的な条件になると、パイライトから硫酸が生成し、強酸性土壌となる。
酸性硫酸塩土壌は、水に浸かっていてパイライトが残留しているタイプ(潜在的酸性硫酸塩土壌)とパイライトが空気に曝されて酸化し、硫酸の形になっているタイプ(顕在酸性硫酸塩土壌)に分けられる。
潜在硫酸塩酸性土壌が水に浸かって還元状態の場合、土壌pHは6.5~7.5程度で問題はない。しかし、掘り返えされたり、排水されたりすると、パイライトが空気に触れ酸化し、大量の硫酸が生成する。土壌pHは急速に低下し、土壌からの排水は時にpH2になる。このため、植物が枯れたり魚類等生物が死ぬなどの生物影響のみならず、建築物のコンクリートや金属が腐食したり、土壌からヒ素を溶出して健康影響を及ぼすことがある。生活や環境に多大な被害を及ぼすが、対策が最も難しい土壌といわれている。
酸性硫酸塩土壌は海水の影響をうける沿岸部や河口域などの低地に多い。微生物による鉄と硫黄の反応は温暖な気候で進みやすいので、熱帯のマングローブ林は潜在的酸性硫酸塩土壌が出現する可能性があると考えた方がよい1)。干拓地や河口浚渫物も注意したい。
海沿いの低地以外にも、地質時代の海成粘土層(半固結泥岩等)や火山地帯にも潜在的酸性硫酸塩土壌が分布することがある2)。通常は、地中にパイライトの層があるので問題ないが、土木工事などで地表に現れると問題となる。また工事で運搬された山土に含まれることもある。インドネシアでは、石炭露天掘りの跡地に出現した例が報告されている3)。
顕在的酸性硫酸塩土壌は強酸性のため、植生が定着せず裸地化していることが多い。深さ50㎝程度の土壌断面を作り、表層と下層の土を観察すると、下層の土壌は還元色の青みを帯びた黒~灰色(色相で2.5GY~7.5GY程度)を呈し、時に亜炭様の有機物を含み、イオウ臭がすることがある。表層は鉄が酸化し黄色~赤褐色となり、土壌はpH4以下の強い酸性を示す(pHメータまたはpH試験紙を用意が必要)。場所や深さの違いで結果が大きくばらつくことがあるので、数か所で確認するとよい4), 5)。
酸性硫酸塩土壌は多くの土壌群に出現する可能性があるが、堆積土(Fluvisols)や泥炭土(Histosols)などに多い。硫黄を含む層位の識別特徴として、FAO土壌分類(WRB)ではThinicが、Soil Taxnomyでは sulfidicやsulfudicが土壌群名の前に付記されている。