保育ブロック

保育ブロックの発想・着眼点

乾燥地の多くでは、多量の潅水を行う手法で緑化が行われている。しかし、貴重な水を消費し永続的な管理の必要なこの手法では、自立した自然形成は望めない。そこで、根系を地中深くまで伸長させ効率よく土壌中の水分を吸収させることで、樹木が乾燥地でも自立して生存できる技術として「保育ブロック」を開発した。保育ブロックは、土や有機物を混ぜ合わせ筒状に成形した土壌ブロックであり、筒状の形状により植物の根を地中深くまで誘導することができる。また、粘土や肥料を配合することで、樹木に効率よく水分や養分を供給し、発芽や初期生長を保護し、根系の発達を促進させることができる(写真1)。

写真1.クブチ砂漠に植栽した保育ブロック苗の根系
植栽後3ヶ月で約80㎝の伸長が確認された

保育ブロックの形状等

最も多く使用されている保育ブロックの形状は、高さ10~15㎝、外径7~9㎝、内径3㎝の筒状である(写真2)。使い方は、穴に種子を入れた保育ブロックを埋設する方法と、穴の中に播種・育苗し、苗木となったもの(保育ブロック苗;写真3)を植栽する方法がある。

写真2. 保育ブロック
写真3. 保育ブロック苗

保育ブロックの使用事例

年降水量が600㎜~800㎜の中国河南省の荒廃山地に、ヤマモモ(Prunus dviana (Carr.) Franch)を入れた保育ブロックの埋設とコノテガシワ(Playtcladus orientalis (L.) feanco)の保育ブロック苗の植栽を行った。この場所は、かつて20万本のコノテガシワのポット苗が植栽されたが、活着率は10%以下であった。

植栽後一切の水やりを行わなかったが、5年後には68.9%のヤマモモと、91.8%のコノテガシワが活着した。また、ヤマモモの平均樹高は223㎝、コノテガシワの平均樹高は172㎝まで生長し、針広混交林の造成に成功している(写真4)。

写真4 施工地の変遷(左:施工前、右:施工4年後)

また、中国内モンゴル自治区での試験では、保育ブロック苗とポット苗の根系を比較したとき、ポット苗の根系が横方向に広がっていくに対し、保育ブロック苗の根系が縦方向に深く伸長していくことが確認されている(図1)。

図1 保育ブロック苗とポット苗の根系の比較

引用文献

  1. 山寺喜成(2010)自然環境再生の緑化技術, 社団法人日本砕石協会
  2. 大林直, 斉藤誠, 佐舗宣行, 山寺喜成, 宮崎敏孝, 楊喜田 (2010) 中国黄河中流域における荒廃山地の早期樹林化手法に関する実証的研究, 日本緑化工学会誌, 36(1), 171-174
  3. 斉藤誠, 顧衛, 邵琪, 大林直, 陳述悦, 戴泉玉 (2010) 中国半乾燥地における保育ブロック苗木を用いた生態回復手法に関する実験的研究―中国内モ蒙古自治区興和県の荒廃丘陵地を例として―, 日本緑化工学会誌, 36(1), 167-170
  4. 保育ブロック育苗マニュアル(乾燥荒廃地用)
  5. 保育ブロック作成マニュアル(乾燥荒廃地用)