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マウンド植林

発想・着眼点

地下水位が高く、季節的に冠水するような湿地では、植栽木に根腐れが発生する危険性がある。そこで湿地における植林にあたっては、あらかじめ地下水位、地形、土壌等の立地条件を把握する必要がある。通常の有効土層の範囲内に地下水がにじみ出てくるような場所においては、土壌改良など植栽基盤の改善が必要である。

湿地における植栽基盤の改良方法の一つとして、マウンド状に盛り上げた地盤に植栽する方法(マウンド植栽)がある。主な利点としては、

  1. 排水性・通気性の向上
  2. 根の伸長範囲の確保

が挙げられる(東京都環境, 2019)。

排水性・通気性の向上

現況地盤との高低差ができるため、排水性が向上する。地下水位の高い場所などに効果がある。土壌の間を動く水に連動し空気も動くため、通気性も向上する。

根の伸長範囲の確保

植栽基盤の厚みが増すため、根が成長できる範囲が広がる。地下水位が高い場所等、植栽基盤を平坦に仕上げると厚みが確保できない場所などで効果的に利用できる。

湿地におけるマウンド植栽(インドネシア)
写真提供:ワイエルフォレスト株式会社

マウンド植栽の方法

浅い穴を掘って、マウンドを形成し、そこに苗木を植えることで、植栽初期に、植栽木が、地下の湿った土に徐々に適応しながら根を張ることをサポートする(Waikato Regional Council, 2018)。

乾季は湿地の水位が低いため、マウンド作りに適した時期である。乾季に労働力を動員してマウンドを作っておいて、雨季に入った早い時期に苗木を植える(Parish et al., 2012)。

事例

タイの劣化した泥炭湿地において、5 樹種の苗木をマウンド(高さ50cm)に植えた場合、通常の地表面に植えた場合と比べて幹の成長が良かったことが報告されている(Nuyim, 2000)。例えば、Syzygium属の植栽木の樹高は、マウンドのある場所では、マウンドのない場所に比べて約2倍になることがわかった(Nuyim, 2000; 2003)。

また、インドネシアの深い泥炭地において、マウンド植栽(高さ50cm)を行った結果、浸水による損失を軽減することができたと報告されている(Yuwati et al., 2021)。

課題

対象地の土壌及び地下水位等の立地条件、並びに植栽に用いる樹種によっては、マウンド植栽が有効でない場合もある。特に、雨季に一定期間冠水するような湿地では、冠水耐性の強い樹種を植栽に用いないと生育できない。また泥炭がなくなって生じた酸性硫酸塩土壌の低湿地においては、冠水耐性に加えて酸性耐性の強い樹種を植栽に用いることが必要である。事前に、それらを確認した上で、マウンド植栽が適用可能かを確かめる必要がある。また、マウンドの形成には費用がかかるため、大面積を対象としたマウンド植栽を行う場合には、植栽に用いる樹種も含めて、事前にフィージビリティ調査を実施することが勧められている(Nuyim, 2005)。

参考文献